ごきげん家の想い

決して断りません

img

ごきげん家は定員が10名の、小規模デイサービスです。

小さな手作りデイだからこそ規則やスケジュールにとらわれず、それぞれが主役になって思い思いに過ごすことができればと思い、一人ひとりに合わせた臨機応変な介護を心がけています。

どんな方でも歳は取るもの。

忘れっぽくなったり、足腰が弱くなったり、昔できていたことが少しづつできなくなったり、怒りっぽくなって怒鳴ってしまったり、叩いてしまったり、落ち着きなく歩き回ってしまったり・・・。そんな時こそ「ごきげん家」は、一緒に悩んで、一緒に迷って、一緒に何とかしようと向き合うことを大切にしています。

まずはそこから。

なので、断るなんてしません。 「ごきげん家」はご自宅で介護をされているご家族の方の助けになりたいとも考えています。

寄りあい処

img

「ごきげん家」には、施設の様に機械浴や、最新鋭のリハビリ機械もありません。

あるのは緑あって出会った人たちとの温かい関係。

「ごきげん家」は介護のみを行う施設ではなく、介護というきっかけを通して出会った子供からおじいさん、おばあさんまでの幅広い年齢の方々が、自分の居場所をさがせる。そんな場所でありたいと思っています。

ごきげん家 代表インタビュー

はじめに

樟葉からバスで10分程度の場所にある『ごきげん家』は、「福祉」「介護」の本来の意味を見直したいという思いで立ち上げられたデイサービスです。 「ごきげん家を寄り合いの場として利用してほしい」とは代表・日高さんの言葉。利用者の方のことを第一に考え、日々新たなことに挑戦する日高さんに、介護のあり方についてインタビューしました。

ごきげん家設立まで

まずは、日高さんのこれまでの経歴を教えていただけますか。
img 以前は、老人保健施設に勤めていました。
現場にいた頃は、排泄ケアもシーツ交換も早くて、丁寧で、きれいで…と、万能な介護士を目指したものです。 その姿勢が評価されたのか、グループホームの立ち上げや、講演会のプレゼンなど、やりがいのある業務も任されました。 経験を積み、管理職までのぼり詰めると、現場で働けないことに葛藤を覚えました。 そんなとき、グループホームの管理者枠に空きがあることを知り、現状を打開するために立候補したんです。 その施設は、在宅に近い生活を信条としていたので、お年寄りを管理するのではなく、楽しく、自由に過ごしてもらうことができました。 しかし、グループホームは入居費が高く、人数制限があることから、一部の方しか受け入れられないんですよね。 やりがいはあると同時に「在宅で本当に困っている人を助けたい」という思いが膨らみました。
その思いが、ごきげん屋を立ち上げる起爆剤になったわけですね。
施設経験を積んでからデイサービスを立ち上げた方に、お話をうかがう機会があったのですが、そのときに印象に残ったのが、「在宅で暮らしている方の多様性はすごい」というキーワードでした。 例えば、施設で暮らした場合、利用者の方がスーパーで買い物し、お会計をする行為が特別なことになります。 それは、スタッフが機会を作らないとできない行為だからです。 多様性のある在宅での生活をベーシックとすれば、施設ではベーシックな生活をするのは困難を極めてしまいます。
ジレンマを感じながら働かれていたわけですね。立ち上げの際に、背中を押されたエピソードはありますか。
img 元々、介護技術よりもお年寄りと本音で話すことに興味がありました。
だって、人生経験の豊富な方からお話がうかがえるなんて、この仕事の特権だと思いませんか? 老人保健施設で働いていた頃に、90歳前後の利用者の方から「30代なんてまだまだ若いんだから、いくらでも新しいことに挑戦できる」と助言されたことがありました。 この言葉が「現状のままで社会的な地位が高まっても、満たされることはない」という確信につながったんです。

ごきげん家の日常・利用者とのふれあい

そして、ごきげん家を設立されました。どのような特徴があるのでしょうか。
img ごきげん家では、重度の認知症の方でもお断りすることはありません。
それは、前述した方やそのご家族こそ、デイサービスを求められていると考えるからです。
私が大切にしていることは、介護を超えた気持ちで接することです。 友達、親友であれば、相手の気になるところは注意しますよね。 逆に、注意し合えない関係は、希薄だとさえ感じます。利用者の方は個性の強い方ばかりですから、そこでひと悶着が起こることもあります。
しかし、問題が解決したら、一山一緒に登ったような信頼関係が築けているんです。 介護のセオリーに「要介護者に対して低姿勢であること」が挙げられますが、私は気持ちを揺さぶらないと、打ち解けられないと考えます。
デイケアサービスは、レクリエーションと生活援助というイメージでしたが、それ以上のお付き合いをされているわけですね。
私どもと利用者の方は、ゲストとコンシェルジュというより、家族に近しい関係だと考えます。
その分、利用者の方に入れ込むエネルギー量は、並大抵のものではありません。 私はそれを十二分に理解していますし、周囲のスタッフたちもフォローしてくれるので、均衡を保てているんだと思います。 また、お一人おひとりを見ながら、対応を使い分けるようにしています。 例えば、いじっぱりのおじいさんがいれば、私が悪者にまわって、女性スタッフたちが優しくフォローしたり…。 これは、利用者の方を個として見て、人となりを把握しているからできることだと考えます。
人間関係を築き上げることに重きを置いてらっしゃるわけですね。
img そこが一番大切ですね。
利用者に独り身のおばあさんがいて、心臓の病気を患ってらっしゃるんです。 自宅で過ごされているときに、体調が悪化して救急車で運ばれたことがあったのですが、不安からか私宛てに電話してきてくださったんですよね。 そのとき涙ながらにおっしゃった「ごきげん家にいると、自分の家族ができたみたい」という言葉が、心に染みました。そもそも、『ごきげん家』の「ごきげんさん」は、会っていない時間を気遣う言葉で、 デイサービス以外の時間も含めて、相手を気遣いたいという意味が込められています。
私たちをしたってきて下さる方ですから、何時も気になるのは当然のことでしょ?
利用者の方たちの過ごし方も、ほかの施設と異なるものなのでしょうか。
私たちと同様に、高齢者の方たちの生活習慣も十人十色です。
その上、長い年月を同じ習慣で過ごされているわけですから、今になって変えようとするのは非常に難しいことです。 大きな施設には規則がありがちですが、私たちはお一人おひとりの性格、生活習慣をできる限り尊重したいと考えています。 また、スタッフの子供たちが定期的に遊びに来てくれるので、利用者の方と一緒にレクリエーションをする時間を大切にしています。 子供が加わると、化学反応が起こったかのようにその場が明るくなるんですよね。 利用者の方が心の中に閉ざしていたものが、徐々に開かれているような気さえします。

今後の展開・地域との連携

話は変わりますが、界隈の施設とは連携を図られていますか。
img ごきげん家に近しいビジョンを持つデイサービスが界隈にあり、そこの代表とは頻繁に情報交換を行っています。 専門書を読んだり、講演会に足を運んだりするよりも、介護に関するリアルな話が聞けますので、非常に参考になりますね。 利用者の1人に、そこのデイサービスにも通っている方がいらっしゃります。
1人よりも多くの頼れる方に囲まれている方が、ご家族の方たちも安心ですから。
1人より2人、2人より3人ということですね。その輪が広がれば、介護問題もいい方向に向かうかもしれませんね。
本来、介護や福祉は困っている人を助けることが根底にありますが、介護団体の敷居が上がり、施設を利用しにくくなっているのが現状です。
私は、それを打破したいという思いで、「介護の根底にある困っている人、行き場のない人の拠り所にしたい」を信条に、ごきげん家を立ち上げました。 今後は、ここでの取り組みを地域の方たちに発信し、介護に少しでも興味を示してほしと考えます。 介護は、家族だけの問題ではありません。周囲の人が気づき、手を差し伸べること。 これが高齢者を守り、住み慣れた地域で安心して暮らしていただく近道だと考えます。